一学期の学校生活は持前の元気とひょうきんさで、友達も増えて伸び伸びと過ごしました。私もPTA役員をうけてましたから、時々学校に行っては
子供の様子を見て安心してました。
ところが、
夏休みの直前、隆が急に「部活を辞めたい」と言い出しました。
隆は、地元のリトルリ―グで2塁を守り4番バッターの活躍を活かしたいと、野球部に入っていました。
部活で養うことは多く、心身の発達に
スポーツは最適と思ってました。
それに、小児喘息で年数回は発作があり、病気に駆け込んでいましたので、体力をつけたいとも思ってました。
しかし、日々の部活は基礎練習で走ることが多く、隆の90キロを超える
体重では、足並みを揃えて走るのは大変だったようです。
リトルリ―グのように複数のコ―チがいるわけではなく、主に部員だけの練習でした。
部活を辞めたい理由は薄々分かってましたが、私は知らん顔して、
「隆は
野球が上手いから2年になったらレギュラーで活躍すると思うけど、辞めたいなんて言うには余程の理由があるんでしょう。良かったらお母さんに話してちょうだい」
隆はためらうことなく、
「入部して直ぐに監督から『お前は
デブってるから大変だな。ちゃんとみんなに合わせろよ』って言われて、監督が練習を見にくると、みんなの前で体型のことを言うんだ。頑張って走ってもみんなより遅いし足並みについて行けないよ」
監督の先生は教務主任で、放課後の部活には熱心ではないようでした。運動部のいじめも噂になっていましたし、監督のいない日々の練習に不安もありました。
数日後、野球部の監督を訪ねて学校へ行ってみると校庭に隆の姿がありました。
1年生が一個連帯になって校庭の端を
ランニングしていました。隆はずっと後ろのほうでした。
職員室に入ると監督の
後ろ姿が目に入りました。
ベランダに出て両手を口にあて野球部めがけ
「しっかり気合い入れてやれよ。3年は2年とキャッチボール。1年は素振り100回やれ」
と大声で叫んでました。
私は後ろから声をかけ
「こんにちは。お世話になっています。突然伺ってすみませんが少し先生とお話しできますか?」
先生は振り向きざま体裁悪い仕草で
「これは、これはどうも。こんにちは、どうぞこちらへ」
と、来客室へ案内してくれました。私は月並みの挨拶をして
「そう言えば、4、5日前に部活の話しをしていて、練習中に体型のことを言われてひどく落ち込んでしまったらしいのですが、もちろん先生は個人差を理解してるので部員にはそのような事は言わないよう指導して下さってると思いますが、思春期はいろいろ難しいですよね。それにしても、教務主任のお仕事と監督の両立は大変ですよね。今日のようにベランダ監督が多いと目がとどかず歯痒いところもあるのでは?」
「あは〜、まいったな。そうですか、彼、気にしてるんですかあ。まあ、部員たちは悪気がないと思いますよ。気にしないように言って下さい。それに、僕も忙しくて練習をみてやれないし、その分3年が新入の面倒を見てますよ。」
「そうですか、悪気がないから、先生も自分の言ったこと忘れているのね。今日みたいにベランダ監督している時に『おい、太ってるの頑張れ』って先生が言っていたのを部員たちも聞いてますけど…。それに、まだ1学期も終わらないのに殆んど部員だけの練習ではちょっと心配ですよね。まあ、先生の指導方針もあると思いますので、帰って隆とよく話して見てますね」
先生と会う前に数人の部員から部活の様子を聞きいてました。子供たちへの思いが欠けてるような気がしたので、相談したい事が事実確認でおわりました。
部活を辞めたいと言った隆の気持ちが分かり、私もまた引き留める理由がない気がしました。
校庭を歩きながら練習中の隆に軽く手を振ると、隆も振り返してくれました。
親子の会話が少なくなって子供の心が見えにくいと嘆く時代ですが、私は会話を重視した子育てを心がけてきたので、何でも話し合える関係が確立していました。中学になっても1日2時間位の会話をしてました。
次男の淳も来年は中学生です。
年子の兄弟なので
幼児時期は手が掛かりましたが、そろそろ落ち着く頃かなと思ってました。